原稿作成スタート(体験記3)

超ベストセラー「 自分史上最高の柔軟性が手に入るストレッチ 」( 村山巧 )←書いてもない考えてもないけど 誕生秘話

台割り・ラフ作成


2月5日、出版決定後、初の打ち合わせ。なにしろ出版は初めてだから知らないことが盛り沢山、というか知らないことばかり。

台割り、ラフ、撮影、原稿という大まかなフローをご教示頂いた。

まず、最初にやることは台割りの作成。

台割りとは各ページの内容を項目だけエクセルで一覧表にするというもの。

本の設計図であり、とりあえずの目次といったところ。

今回の例で言えば、2章・3章が主になるのだけれど部位をどのように分けるのか、それぞれ何ページ割り当てるのか、どんな応用ポーズを取り上げるのか、モニターの体験ページを冒頭に入れよう、コラムはどことどこに入れるか、その内容はどうする、など大まかな計画を立てる。

もっとも、この時点では原稿のイメージだけで具体的な内容が全然決まらない状態なので全くの暫定版で後々の変更は当然に生じる。

しかし、これをやっておくことで、全体の流れ・どこに重点を置くのかというようなことが明確になり、分量も100ページじゃ足りないなとか150ページも書くことはなさそうだ、などといったことが決まってくる。



台割を終えると次にラフ作成になる。期限は3月末。

ラフとは台割りをもとに、各ページのおおよその構成を決めていくおおまかな原稿・下書きのこと。

この辺にこんなポーズの写真があって、こんな説明があって、とか台割りをもとにさらに具体化していく。

デザインの段階で大幅に変わるのでこの段階ではレイアウトとか色とかにこだわる必要はあまり無い、と後で判明。

ラフの書式は自由と言われたため、MicrosoftWordで作り始めたり、手書きにしたり、寄り道を随分しながらいろいろやった結果、使い慣れたパワポでラフを作成することとした。

編集者からはパワポでラフを作った人初めて、と言われたが、写真メインの本はPowerPointが作業しやすいはずだ。

言葉だけでコチラにこんなポーズの写真、アチラにあんなポーズの写真ということだと私自身もそうだし、ましてや他の人にはピンとこないので、自分とみきちゃんのポーズ写真やらネット画像やら書籍の写真やらを並べてイメージを具体化していく。

さらに

モデルは誰にする?

モニターさんは?

各ページの内容は?

カメラマンは誰?

決めることは山盛りだ。

製作にかかる費用は基本的に出版社で負担して頂くとはいえ、有名人でもない初出版に大きな予算がつくはずもなく、できれば知り合いに頼んでなるべくお金をかけずにやりたい。

男女モデルの本なので、女モデルは私が通うバレエ教室の先生みきちゃんでいいとして、男モデルは俺が自らやると主張するも、編集者さんは若い人がいいという考えで平行線が続いた。

最後は押し切って自ら登場することとなった。

俺が出ないとなれば、俺自身は全くのゴーストライターみたいになってしまう(しかも無報酬)わけで俺が売る理由が無くなってしまうのだから、これは重要な分岐点だったといえる。

ちなみに出版社の編集者は制作にあたり全面的な裁量をもっているので、こちらの希望の進路に誘導することはあまり難しくない。

何しろ、編集者さんは同時並行で数冊の書籍制作を手掛けているわけだから忙しい。

そこへ、カメラマン・イラストレーターを私が連れてきて、日程調整も報酬の交渉も済んでるとなれば、基本的に断る理由がなくなります。

本書でもカメラマン・挿絵・メイク担当を私の知り合いで固めることに成功した。

彼ら自身の宣伝になる面もあるわけだから、書籍のプロモーションに一役買ってもらえる。結果、これも奏功した。


ということで、企画・執筆・モデルを私が担うことになった。

実際、内容は99.9%私の整理なので私自信が著者を名乗りたかったが、形式上、著者の名前はストレッチ界の知名度がある村山氏で、ということに決まった。

商業出版はあくまで出版社がコスト・リスクを背負うわけで出版社の考えが最優先となるのでこの点は致し方ない。

4月中に撮影、6月に原稿完成、本の発売は最短で7-8月くらいというざっくりしたスケジュールが決定。


ハッキリ言ってこの時点では、写真メインで動きやポーズに関する簡単な説明が大半だから原稿を作るのは簡単に終わると思っていたのだった。。。




写真撮影


2019年4月3日、ラフ原稿ができたところで打ち合わせ。

3週間後の4月21日に撮影日が決まった。カメラマンは特に決まってないというので知人を紹介した。

数年ビジネス交流会に出ていると大抵の業種に知人がいるので結局、カメラマンだけでなく、メイク担当、挿絵のイラスト担当も知人をあてがってもらった。

なにしろ、大きなコストはかけられない。


会場代もいらないところがいいということで、バレエ教室だの公民館だのと案は出たが結局、コストはかかるものの、きれいな白い壁がある撮影専門スタジオに落ち着いた。

体験モニター7名、年齢・性別・運動経験バラバラでギリギリになってかき集めた。

高齢者モデルを1人くらい入れたいということで私の母まで動員することとなった。


なお、本書の特長のひとつとしてパステル調の明るい紙面が挙げられる。

衣装は私もみきちゃんも白ベースとなっている。

もともと、くっきりはっきりするから赤とか黒とか派手目な衣装が良いのでは?と思っていたんだが、編集Sさんの意向で白基調となった。

結論から言うと、類書と比べてこの明るい紙面が潜在意識レベルで心地よさを演出しているのだと私は感じている。

撮影までに、25ページの上にこんなポーズの写真、右にはこんなポーズ、という感じで細かなとこまで決まっている必要があるわけだから、撮影前にすべての内容が確定している必要がある。

撮影間近、ひとりで原稿をどんどん埋めていき、準備を進めた。



4月21日、青山のレンタルスタジオに朝8時集合。

思った以上にスタジオは狭くてモニターさんが7人もやってきたらパンパン。

無論、事前準備はしていったものの、私自身がモデルもやりながら、撮影の指揮もやる、という体制だったので思ったより時間がかかった。

結論から言うと300ポーズ以上の写真を撮るには5時間では全然足りなくて時間切れ終了。

平成から令和に変わったゴールデンウィーク、10連休の長い休みの間に、膨大な写真の中からどれをどこに採用するかを選ぶ作業に追われ、連休後、補足の撮影が決まった。




原稿作成が本格化


撮影が終わると原稿作成が本格スタートした。

まずはベースとなるデザイン(見開き2ページ分)をして頂くことになった。

なのでそこの部分の原稿だけでも完成レベルの原稿にする必要がある。

ちょうどこのころ、パカッと開く特殊な製本技術であるコデックス装のことを印刷会社の社長から教わり、編集者さんには本件にぜひ採用してほしいと進言した。

コデックス装となると製本コストは高いし、製本に時間もかかるのだが、「脚も本もパカッと開脚」私の中では勝手にキャッチフレーズも出来上がった。

思い返せば、コデックス採用はここがギリギリのタイミングであった。

発刊後、予想通りコデックスが高く評価されたことを考えればこれまた大きな分岐点であった。

後日お会いした他の出版社の方からは、50年も書籍製作に関わってきたけどこんなスゴいアイデアは初めて見たと言われた。

ちなみに本書以降、コデックスのストレッチ本がポンポン出ている。出版業界は、2匹目のどじょう狙いがデフォルト戦略なのだ。

これまでは写真撮影に間に合わせるために、写真のレイアウトやポーズをどうするかに主眼があって、動きの説明・留意事項などはおざなりに考えていたのだが、わかりやすい表現を考えて細部まで文字を見直す。

文字ばかりのページもいくつかあるので文章ページもおおむね固める必要がある。

たとえ数ページであってもしっかり書こうと思うと時間はかかる。

こういうときは類書を参考にするのがやはり早い。

流れを真似たり、表現方法を参考にしたり、アイデアを見るため執筆に当たっては、近所の図書館2つを掛け持ちして、借りた本はチラ見で終わったものも含めれば50冊をゆうに超える(100冊も超えてると思う)。

5月21日、仮デザインが届いた。

ポップな感じとちょっとマジな感じの2種類。編集者さんと話した結果、両者の中間っぽくいくことになった。

基本、デザインに関しては一応意見を聞いてもらえるものの出版社にゆだねるのが商業出版における暗黙のルールだ。

本らしくなってきたのでこちらも俄然スピードアップする。

動きの説明や細かな表現とかどんどん埋めていく駆け込み作業が続き、できたページから順次デザイナーに送付する。

予定通り、5月末に一応全ページの原稿が完成した。

普通、初物の著者が予定通りに原稿を用意できることは少ないようだが、ここは相当頑張った。





ああ、果てしない校正作業


一旦完成と同じタイミングですでに提出した原稿のデザインが上がってきた。


ここからは校正に入る。

校正とは、誤字脱字の修正、です・ますを整える、わかりやすい表現に改める、といった作業。

やってみてわかるのは、これらは比較的簡単というか気づきやすい。読んで違和感があるから。

一番厄介なのは表記ゆれの統一だ。

例えば「ひざ」「膝」「ヒザ」を「ひざ」に統一するというもの。

それぞれ個々の文は読んで意味が通じるし、誤字ということでもないので、よほど意識してみていかないとスルーしてしまう可能性が極めて高い。

例えば、半角英数字と全角英数字が混同していることに気づいたのはかなり終盤だった。

なお、校閲と校正という言葉がある。

校正は上述のように形式面のチェックを指し、校閲はウソが無いか、矛盾が無いかという内容面のチェックにかかわるものを指すようだ。

校正は大変手間がかかる作業で今はPCで全文検索が簡単にできてしまうけれど、以前は大変だったろうな、というかどうやってたんだろう。

この作業は大変な割には付加価値があまりないわけなので、これこそAIで自動化されるべき仕事と強く感じた。

参考までに今回の校正で表記統一した用語の例としてこんなものがある。

原稿の表記→→→統一後

ひざ・膝・ヒザ→→→ ひざ
ひじ・ヒジ →→→ひじ
かかと、カカト →→→かかと
もも・太もも・モモ →→→もも
体側・体側部→→→ 体側部
本書・この本 →→→本書
体・カラダ・身体 →→→体
ページ、頁、P→→→ P
一人、1人→→→ 1人
是非、ぜひ →→→是非
もも前、ももの前面、ももの前側・前もも、もも前面 →→→もも前面
もも裏、ももの裏面、ももの裏側、もも裏面 →→→もも裏面
掴(む・んで)、つかむ →→→つか



この校正作業は単純作業で疲れるので、このプロセスにおいては形式著者の村山氏からも協力を得た。


実のところ、彼が手伝ったのはこの校正作業のみである。

話をもどそう。

表現をわかりやすく改めたり、字句を統一したりと修正を赤字で手書きし、送り返すというキャッチボールが続く。

はじめは1週間おきだったキャッチボールがだんだんペースが上がり、2日以内に返信、翌日に返信という具合に間隔が短くなる。

そして締切直前は6時間以内に修正して返してください!みたいなことになっていく。。。


追い込まれつつも6月末、最終的な原稿が完成。


原稿の制作に取り組み始めて丸4ヶ月、企画書に着手してから1年という長き戦いはついに終止符!

あとは本になるのを待つのみとなる。

発売日は2019/7/19。1週間ほど前に完成版が手元に届いた。

パカッと開く特殊製本もナイスな仕上がり。



これで長きにわたったプロジェクト完結。

あとは、出版社さんがバンバン売って、新聞・雑誌・テレビにバンバン紹介されてめちゃくちゃ売れるのを待つだけだ、、、と思っていた。






ところが意外な?事実が判明。

なんと、本は出して終わりじゃない。やっと戦いが終わったと思いきや、実は本当の戦いはこれからだったというロールプレイングゲームの裏面突入みたいな話。

そうです。本は書いただけで売れなきゃ自己満足、マスターベーション、紙の無駄で環境破壊になるだけ、まるっきり疲れるだけなのだ。


こうして「やっと終わった!」と思った俺の役割、実は全然終わってなくて、これから営業大作戦が必要なんだと悟ることになる。

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