自分史上最高の柔軟性が手に入るストレッチ はこうして生まれた
我ながらよくできた企画書だし、5社くらいは反応があるだろう!
で、その中で条件交渉して出版社を選べばいいや。
出版界の実情を知らない私は一人で勝手に盛り上がっていた(後で書くが、出版業界の実情を知っていたら他人の名義で本を書いてみようなんて思わなかったはずであり、全くもって知らぬが仏とはこのことだ)。
2週間たったころ、ある大手出版社から郵送でお返事が届いた。
おっとこれはもしや!と開封するも「残念ながら見送らせて頂きます」というお断りの通知。。。
そんなお断り通知が5件ほど続く。
ちなみに、出版社には膨大な持ち込み企画書が届くため、返事すらくれないのが普通。
わざわざ断りの返事をくれるだけでも良心的な会社であり、基本的に無視されるのが当たり前と思っておくべきである。
プロの出版コンサルタントを介して提案先の出版社を厳選しても打率は1割未満と聞いていたので、出版に関してはド素人である私の企画書がそう簡単に採用されないであろうことは想定の範囲内だった。
とはいえ、発案から半年、時間をかけて何度も推敲して知力を結集し、一言一句まで吟味して過不足ないように全力で作り上げた企画書である。
こう言っちゃなんだが、俺の本気の企画書だぜ、その他大勢とは格が違うはずで出版社同士で取り合いになるんじゃないかってな思いも当然あった。
それだけに全滅は心が折れる体験だった。後から編集者さんに言われたところでは、コネなし・出版実績なし・飛び込み企画提案で採択される確率は1%未満だそうだ(ま、1%は控えめな数字で、Sさんは20年編集者をやって例を見たことが無い、とのこと)。
話をもどして、3週間ほど経過して全滅を悟った私は、ダメでもともと、インターネットで持込企画の受け入れを表明している出版社を調べ、追加で3社に改めて企画書を送った。
もはやダメで元々、最後の悪あがきであった。
音沙汰ないまま、さらに約3週間が経ち、「これは料金を払ってコンサル業者に任せるしかないな」と考え始めたころ、1通のメールが届いた。
かんき出版編集部のSさんより一度話を聞きたい、との連絡だった。
今でも企画書を送付した出版社のリストを残しているのだが、かんき出版は98社目に名前を挙げた、まさに最後の1通だった。
企画会議を通過・商業出版決定!
まずは第一関門突破だが、ここからが本当の勝負!
(っていうか、この時点では、本当の勝負がこのあとずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと続くことになるとは思いもよらなかったが)。
編集者さんが気にいっただけでは足りず、まずは、出版社内の企画会議にて、OKをもらわなければならないのだ。
2018年12月19日、年の瀬が迫ったタイミングで編集部のSさんと初対面。
まずはSさん自身にこのノウハウを気に入ってもらわなければ始まらない、ということで半ば強引に足裏ほぐしを体験してもらい、効果を実感していただくことにした。
作戦は奏功、喜んでもらえた。
しかし、私の企画案には異論がある感じだった。
編集者視点からの意見としては、「方向性は良いが、企画会議にかけるにあたり、もっと尖った感じにしたい」との由。
数年前にTVでひっぱりだことなった「ベターッと開脚」をはじめ、横開脚の本は割とたくさんあるので、その中にあって特段の実績がない著者で本を売るには十分に奇をてらうというか目新しさが必要、という考えなのだった。
前後開脚をテーマにして企画書を修正して欲しい、「一日10分、一か月で前後開脚できるプログラム」を作って欲しいという依頼だった。。。
つまり、「誰でも1か月で前後開脚できちゃう!」本にしてくれというリクエストだった。
正直これは困った。いくらなんでも無理筋だ、と。
10年バレエをやっててもきれいに開脚できない人はゴロゴロいるわけで、一か月で前後開脚なんて無理に決まってる。
大げさに煽る内容で本にしたところで「実際にそんな効果がない」とあとで酷評されるのが目に見えている。。。
むろん、本意ではないが編集者の意図に沿わない限り出版はないわけで、ここは折れるしかないか。。。
打ち合わせ後、私からの確認メールはこんな感じ。
『「中上級者向け、全身の柔軟アップ」という方針で企画書作成しましたが、今回は「一般読者向け、前後開脚にフォーカス」に方針転換して企画書を修正するということでよろしいでしょうか』
社内での企画会議は月二回開かれることになっていて、次回は新年早々の2019年1月9日と聞いた。
ここは一気に勝負を決めたい私は勝手にスピードアップ。
面談の翌日には企画書を書き換え、次回の企画会議に上程してほしい旨のお願いと合わせて再度メールを送った。
年明けになり、Sさんより企画会議の結果、大筋でOKが出たとの連絡があった。さらに社内会議の結果、一部方針を変更。
●メインの対象読者を「30~50代女性」から「アンダーアスリート(一般人でも割と本気でスポーツに取り組んでいる層、くらいの意味と解釈した)」に設定する
●書店では「健康の棚」ではなく「スポーツの棚」に置くイメージの内容にする
●「前後開脚」ではなく「ストレッチ全般」をメインテーマにする
●参考の類書を想定し、「簡単」で「すぐ効果が出る」ことを強調する
●美容面や健康面だけでなく、スポーツの効果を謳う
ということで再度方針が変更され、「初級者から上級者までが対象、全身の柔軟アップ」で行くことになる。
大筋で当初の私の企画案に戻った感じだ。自分のイメージ通りに収まった。
多少修正して、再度企画書を提出、めでたく合格となった。
よし、商業出版決定!
とはいえ、当時の私には、ここからさらに大変になる事など知るべくもなかった。。。