「有酸素運動は20分以上やらないと効果がない」は本当か?

「脂肪が燃え始めるまでに20分かかる」そんな聞いたことがるでしょう。

でも正しく理解している人は多くありません。

その結果、「有酸素運動は20分以上やらないと無意味」「筋トレでは脂肪は燃焼しない」など誤解して伝わっている面もあります。

これを読めば、有酸素運動と脂肪燃焼の関係、最速で脂肪を燃焼させる方法がよく理解できます。

公開日2020/12/19 最終更新日 2020/12/19

【 目次 】

1.なぜ有酸素運動が脂肪燃焼に有効なのか?
2.20分の間に何が起こっているのか?
3.最速で脂肪を燃焼させるには?

 

なぜ有酸素運動が脂肪燃焼に有効なのか?

なぜ有酸素運動が脂肪燃焼に有効なのか?

「脂肪燃焼には有酸素運動が有効、でも20分以上運動しないと脂肪は燃えない」運動をする人なら何度も耳にしているはずなのですが、実はよく理解されていない部分です。

これを正しく理解するには、本来、高校生物の知識が必要です。

細胞の中のミトコンドリア内で酸素呼吸によりエネルギーが生成されます。

 

ごく基本的な化学式は

C6H12O6 + 6H2O + 6O2  → 6CO2 + 12H2O + 38ATP

ブドウ糖 + 水 + 酸素 → 二酸化炭素 + 水 + エネルギー

 

別にこれを知らずとも構いませんが、この化学反応の過程で脂肪酸が消費されます(高校生物の知識がある方だけで構いませんが、TCA回路・クエン酸回路において脂肪酸はアセチルコリンに変換され消費されます)。

エネルギーを消費しながら上記の酸素呼吸を多く長く行うことで、脂肪酸の消費が進みます。

 

エネルギーを消費しながら酸素呼吸を多く長く行うためには高負荷で短時間の筋トレよりも、低負荷で長く続けられる有酸素運動の方が有効です。

これが有酸素運動が脂肪燃焼に有効、と言われる理由です。

脂肪酸は筋肉中・血液中にも含まれており、運動開始時にはその脂肪酸が使われます。

初めは糖質がエネルギー源で、20分経過したころから脂肪がエネルギーに変わる、という言い方を見ることがありますが、これは完全な誤解です。

正しくは、初めは脂肪よりも糖質のウェイトが高いが、20分頃からその比率が逆転する、ということです。

 

  • 酸素呼吸の過程で脂肪酸が使われる
  • 酸素呼吸を長く続けるほど脂肪酸が消費される
  • 20分で糖分から脂肪に燃料が変わるわけではない

 

 

20分の間に何が起こっているのか?

20分の間に何が起こっているのか?

それでは、胸やお腹、お尻周辺に蓄積された中性脂肪が運動で消費される過程をもう少し詳しく見ていきましょう。

胸やお腹、お尻周辺に蓄積された中性脂肪はそのままでは酸素呼吸の過程で消費されません。脂肪の分子量は大きく、ミトコンドリアに入り込めないからです。

中性脂肪は成長ホルモンにより脂肪酸に分解され、血液中に溶けて、全身の細胞へ運ばれ、ミトコンドリアに入り込み、消費されます。

運動を始めると成長ホルモンが多く分泌されますので、運動により脂肪が消費されやすくなる、という訳です。

 

つまり、運動で中性脂肪が消費される過程は下記の長いステップが必要です。20分かかるといわれるのはこれが理由です。

運動する

成長ホルモンが分泌

中性脂肪を脂肪酸に分解

脂肪酸が全身の細胞へ

細胞内のミトコンドリアへ

ミトコンドリア内で酸素呼吸の過程で消費される(TCA回路・クエン酸回路)

 

重要なことは、成長ホルモンの体内濃度が高い状態で有酸素運動をすることであり、この理解がないと「20分やらないと効果がない」「途中で止めたら無意味」などの浅く不正確な知識に留まってしまいます。

 

  • 運動で成長ホルモンが分泌される
  • 成長ホルモンは中性脂肪を脂肪酸に分解する
  • 成長ホルモンが体内に広がるまでに時間がかかる

 

最速で脂肪を燃焼させるには?

最速で脂肪を燃焼させるには?

ここまで理解したら、20分を短縮し、最速で脂肪を燃やす方法のヒントが見えてきます。

上記の過程の中で、初めのステップにあたる、成長ホルモンの分泌の段階で特に時間がかかります。

ということは、成長ホルモンを短時間で大量に分泌させることができれば脂肪燃焼開始を早めることができるということです。

 

成長ホルモンを短時間で大量に分泌させるには、高負荷の筋トレが有効です。

筋トレで筋肉中に蓄積された乳酸が、成長ホルモンの分泌を促進するのです。

高負荷で、数回しか繰り返せないような負荷での筋トレが有効です。

バーベルやダンベルなどがあれば負荷の調整は易しいですが、同じ腕立て伏せでも①手の幅を変える②足を台の上にのせる③逆立ちで腕立て伏せ、、、など工夫次第で自分の体重を負荷にする自重トレーニングでも強度を上げることはできます。

自重トレーニングについてはこちら

 

スロートレーニング・加圧トレーニングによる効果

動作をゆっくり行うストートレーニングと言われるメソッドがあります。例えば、腕立て伏せを10秒間かけて下ろし、10秒間かけて上げるような方法です。やってみればわかりますが、肌肉は休む暇がないために、酸欠状態になり、疲労が早まります。

腕やももの付け根をバンドで締めることにより、血流を制限した状態で行うトレーニングが加圧トレーニングです。血流が制限されるために、負荷が小さくても酸素供給が減り、乳酸の除去が滞ることで、疲労が早まります。

これらでも成長ホルモンを短時間で集中的に分泌することが期待されます。

 

なお、私の場合は、高負荷・加圧・スローの複合トレーニングで一気に筋肉を疲弊させるやり方を多用しています。

  • キーポイントは成長ホルモン
  • 高強度の運動で成長ホルモンが大量に発生される
  • スロートレーニング・加圧トレーニングで更に加速する

 

 

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東大ストレッチ博士
東大ストレッチ博士

【東大ストレッチ博士】 学生時代より器械体操・空手・少林寺拳法・筋トレ・エアロビクス・バレエなどを経験し、自己流で高い柔軟性を体得。 解剖学や脳科学の観点からアカデミックに効率的な柔軟性向上と筋力強化に取り組む。 東京大学経済学部を卒業。帰納的推論と演繹的思考がモットー。 意見を述べる際は理由と共に、を心がけております。 そうでなければ検証・反論が難しいからです。

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